現行品から中古買取までエフェクターメーカー最大手、electro-harmonix
electro-harmonix、それは新品でも中古でも買取でもよく目にするあの有名機、BIG MUFFを作ったメーカーであり、それ以外にも数々の名機でありとあらゆるギタリストを魅了するエフェクターメーカーの最大手とも言っていいでしょう。
そのelectro-harmonix社の社長、マイク・マシューズ氏の白い長髪と髭、葉巻をくわえた姿は同社の9V電池のデザインにもなっていることから見たことがある方もいるのではないでしょうか。
ギタリスト、ベーシストとして自分の足元にも何かしらelectro-harmonix社製品が入っている方も多い筈。今回はそんな同社について、まとめてみようと思います。
プレイヤー達の歴史と共に、EHXの歴史
創業者であるマイク・マシューズ氏は1941年に生まれ、ニューヨークで育ちました。彼自身がいうには、幼少期からピアノを始め音楽の世界に足を踏み入れると同時に、強い起業家精神があったそうで、幼いころから色々なものを売ってビジネスに夢中だったそうです。そうして成長していく中で自身もエレクトリックピアノやオルガンの演奏者としてR&B、ロックの世界に進むのと同時に、ライブのブッキングや様々なバンドのプロモーションを行うなど、類稀なるその才能をいかんなく発揮していったといいます。
そうしてコーネル大学を卒業し、電気工学の学士号と修士号、およびビジネスマネジメントのMBAを取得。その後1965年にかのIBMにコンピューターのセールスマンとして入社、しながらもコンサートのプロモーション業を続けていくなどビジネスマンとして突き進んでいたころ、あるギタリストと出会います。
それが、かの有名なジミ・ヘンドリックス。当時はまだカーティス・ナイト&スクワイアーズのギタリストとして演奏していた時代にプロモーターとしてマイク氏は出会い、意気投合します。そしてあるきっかけからエフェクター製作・販売に触れたこともあり1968年にelectro-harmonixを創業。当時ギターアンプだけではあまり歪まず、誰もが憧れるキース・リチャーズや、ジミ・ヘンドリックスのようなサウンドは出せない、もっと刺激的に歪ませて彼らのような音を出せるエフェクターを求めてアイディアを集め、発明家ボブ・マイヤーの元での発見をきっかけに同社の第一号となる直接アンプに差し込む形のブースター、LPB-1が完成します。
そしてそのすぐあと、1969年に言わずと知れた名機、BIG MUFFが完成します。その第1号をニューヨーク西48丁目にあったマニーズ・ミュージック・ショップに納品。ここはジミ・ヘンドリックスがストラトキャスターと運命的な出会いを果たした場所でもあり、まさに決められていたかのように一週間後にまた訪れたマイク・マシューズ氏はそれが彼に売れた事を知り、その後まもなくスタジオで実際に繋がれているところも目の当たりにします。
しかしながらプロのスターたちのためではなく、みんなのために作る。これがelectro-harmonixの心構えであるとマイク氏は述べています。それを体現するかのように低コストでの大量生産に重点を置き、当時の機材としてはかなり手頃な価格でBIG MUFFを流通させます。初年度には5万ドルだった売上が10年後には500万ドルに達し、250人を超える規模まで成長を果たします。
しかし1981年にとある労働組合に目を付けられ、従業員が襲われるなどの破壊行為によって財務問題が膨らんでいき、銀行からの融資も停止され、電気も止められながら発電機で何とか続けていたものの、ついには工場は閉鎖、破産を申請することとなってしまいます。
けれどここでelectro-harmonixの歴史は終わりませんでした。マイク・マシューズ氏はその起業家としての才能や、需要へのセンスを発揮し、ロシア製の真空管の販売を開始。これが後々にギターアンプだけでなくオーディオアンプの分野でも有名になるelectro-harmonixの真空管のはじまりです。見る見るうちに事業を成長させ、ロシアの世界最大の真空管工場があるサラトフに工場を購入。ギターアンプメーカーだけでなくオーディオメーカーのMcIntoshやAudio Researchなどにも真空管を供給する、世界でもトップクラスの真空管サプライヤーになりました。
そうして90年代初頭、マイク氏は70年代に販売したelectro-harmonix製品が、ヴィンテージ市場で高値で取引されていることに注目します。そこでソ連が崩壊し仕事を探していたサンクトペテルブルクの軍需工場にBIG MUFFの回路図とサンプルを渡し製作を依頼。そこから再びエフェクターメーカーとしてのelectro-harmonixが再始動します。BIG MUFFを愛用している方であれば、この頃のロシア製、『ロシアンマフ』と呼ばれる時期のものは耳馴染みがある事でしょう。
再始動後もロシアで企業乗っ取りや悪徳商法に襲われる中、それらに果敢に立ち向かい、過去のモデルのリイシューや新しいモデルを次々に発表。そうして発展を続け、現在ではニューヨークへも戻り、ペダル、アンプ、弦など150種類以上、真空管では360品番以上も生産する大企業として、世界中のプレイヤーを支え続けています。
中古・買取市場も活発、EHX製品の特徴
electro-harmonixの特徴を一言で言えば『極端』、しかしながら逆にそれが『このペダルでしか出ない音がある』という唯一無二の特徴を何モデルも作り上げています。競合が思いつかない、誰にも真似できないユニークなペダルを作ってきた、と創業者のマイク・マシューズ氏も語っており、単なるギタリスト・ベーシストとしての楽器本来の良い音だけではなく、オルガンや電子ピアノ、メロトロン、シンセサイザーのような音が弾ける9シリーズや、その他シタールの音を模したエフェクターなど、これらにより世界中のギタリストのプレイの幅を常に広げてきた、そういった部分もelectro-harmonixの特徴ではないかと思われます。先程から何度も出てきているBIG MUFFですら、その唯一無二のトーンからディストーションなのか、それともファズなのか、という論争が今でもずっと続いており、さらに他メーカーからもBIG MUFFをリスペクトしたエフェクターが現在では多数販売されるなど、ある種一つのエフェクターの分類の一つと言えるほどまでにその個性を放っています。
また、それぞれの品名やルックスも個性的な物が多く、ディレイの『MEMORY MAN』、リバーブの『CATHEDRAL』、筐体の大きな『BIG MUFF』に対して小型された『LITTLE BIG MUFF』、さらに小さな『NANO BIG MUFF』など、キャッチーでありながらユーモアのあるネーミングやデザインをしており、その見た目から足元に置きたくなるユーザーも多いのではないかと思います。
EHX製品買取の際に注意したいこと
前回のコラムや、先程も少し触れましたが、electro-harmonix製品は年代やバージョンの違いがある製品が多数存在します。初期のニューヨークで生産されていたモデル、ロシア工場時代に生産されていたモデル、その後再びニューヨークで生産されたモデルなど、それぞれが同じ品名でも異なる外見やサウンドの特徴を持っており、それぞれによって中古での価値も全く異なってきます。そのため品名だけでこれは安いだろうし別に捨てていいや、古くてボロボロだから大した買取金額にならないでしょ、と決めつけるのは早計。また、逆にヴィンテージ品が人気のモデルだからと言って同じ品名の違うバージョンが必ずしも高価になるとも限りません。
そのため問い合わせの際は、まずは買取業者に連絡し、写真や細かい色、品名のフォント、各ノブやスイッチの特徴等々と共になるべく詳しく問い合わせてみましょう。
そして、さらに買取の際に気を付けなければいけないのが付属品。エフェクターは殆どの電源が9Vセンターマイナスの共通の規格で設計されていることが多いですが、ここもやはり個性的なメーカー、独自の電源の規格、専用のアダプターを必要とする商品も多数存在し、中には40V出力のアダプター等一度失くしてしまったら日本国内で手に入れるのがやや難しくなってしまうような付属品を持つものもあります。
そういったものが無い状態では中古相場が下がってしまうこともあり、買取の際もマイナスとなってしまいます。本来ついていた付属品、特にそれが無ければ動作出来ないような付属品に関しては必ず揃えて買取へ持ち込むようにしましょう。
いかがでしたでしょうか。
強烈な個性の創業者から始まり、強烈なラインナップでプレイヤーの感性を刺激し続けるelectro-harmonix。
かつてあなたが夢中になったその一台を、エコストアが次なるプレイヤーへと繋ぐ架け橋となれれば幸いです。
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