パワー?コントロール?プリメイン? オーディオ中古買取でも重要機材、アンプ(Amplifier)とは
パワーアンプ、コントロールアンプ(プリアンプ)、プリメインアンプ(インテグレーテッドアンプ)、普段のオーディオの会話や中古買取の市場でもまず話題に上がるのがこういったアンプの類。
一般の方からしたら全て一括でアンプ、と呼ばれてしまう事が多いですが、どういった信号を受け、どういった信号のレベルまで増幅(amplification)するのか、その用途や手法によって種類も特徴も様々。オーディオブームの時代の真っ只中を生きた故人の方が残していった、アンプらしき機械があるけれどこれをどうやって使うのか、どうやって繋いだらいいのか、果たして自分が使わずとも何処か買取してもらえるようなものなのかもわからない、といったお客様も近年多いのではないでしょうか。
マニアの方からすると当たり前の記事になってしまうかもしれませんが、上記のように自分ではわからないオーディオを売りたい方、もしくはこれからオーディオを始めていきたい初心者の方へ向けて今一度『アンプ』と呼ばれる機材について、おさらいしていきましょう。
用途によって様々、オーディオ用アンプの役割
アンプ、という言葉は増幅器を表す、Amplifierという言葉から来ています。つまりはアンプと括られているものの共通項は入ってきた信号を増幅して出力するという部分になります。少しでもオーディオや、音楽制作に触れたことのある方であればさらに派生した、パワーアンプ、コントロールアンプ、プリアンプ、プリメインアンプ、インテグレーテッドアンプ、ヘッドホンアンプなどの言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
それぞれどういった種類の物なのか。これを理解するためには、まず基本的なオーディオのつなぎ方と、信号の種類について見ていきましょう。
とてもざっくりとオーディオの構成を図にしていきます。ここでは、4段階に分けて考えていきましょう。
まず一番左の音源部、ここは仮の括りとして音楽媒体から信号を取り出して電気信号を最初に流す部分、機器としてはレコードプレーヤーは勿論、CDプレーヤーやカセットデッキ、近年で言えばPC等から接続するD/Aコンバーターやネットワークストリーマー、安価で簡易的なオーディオインターフェース、さらに言えばスマホや携帯プレーヤーを繋ぐ場合もここにあたるとざっくり考えていただければ大丈夫です。
勿論機種にもよりますが、音源から取り出されてすぐの信号は基本的に信号として小さい事もあり、あまり長距離の伝送にも向きませんし、伝送するケーブルの間でノイズが乗ってしまえば、本来伝送したい信号に対して比率的に大きなものとなってしまいます。
そのため、こうして音源部分から受けた信号をまず伝送に支障が無い程度に増幅し(信号の種類によってはインピーダンス等の問題もありますが、ここでは割愛します)、さらに音の帯域のバランスの調節や、増幅した後の音量自体の調節機能を経て送り出されます。この部分をコントロールアンプ、もしくはプリアンプと呼びます。
またレコードに記録された音源はRIAAカーブ(簡単に言うと針飛びしないようにレコード盤に記録するために音源の低域を小さく、高域を大きくする規格)がかかっており、基本的にレコードプレーヤーから出力されるのはフォノ信号と呼ばれる独自の出力のため、その信号を受けて元の音源に戻すための変換機能、フォノイコライザー機能が備わったものもあります。
そういった音の調節や変換を行う部分であるため、コントロールの呼び名が付けられています。ある意味、DJで使うDJミキサーなども、フォノイコライザー機能とそれぞれのチャンネルに接続された信号の増幅と調整を行えるため、コントロールアンプの亜種とも呼べるでしょう。
しかし、ここで増幅された信号、一般的にはライン信号と呼ばれるものになりますが、この段階ではまだスピーカー自体を物理的にしっかり振動させていくだけの信号の大きさや、その他必要な電気的な条件を満たしていません。そのためここからさらに登場するのが、パワーアンプという種類のアンプになります。
細かい事を言うと他にも電気的条件がありますが、大まかにこの部分ではライン信号をスピーカー信号とも呼ばれるとても大きな信号まで増幅する、と思っていただければ結構です。楽器や音楽制作をされている方であれば、こういった信号について、マイクレベル、ラインレベル、スピーカーレベルといった言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
こうしてスピーカーのコイルを物理的に動かせるだけの大きな信号となり、スピーカーから空気振動の音楽として再生されます。中にはボリュームノブが付いているものもありますが、パワーアンプの半数は調節機能を持たずに一定の倍率で増幅するだけの機能を持ったものも多く、表面には電源スイッチだけ、といった機器も多いです。そのため先程ご紹介した前段のコントロールアンプでライン信号の時点で音量を調節しながら、パワーアンプへと入力されるのが基本です。また、パワーアンプには下の画像の様に左右それぞれが独立し、2台のモノラルペアとして販売されているものもあります。
こういったコントロールアンプとパワーアンプで2段階に分かれた形のアンプ群は現代では総称してセパレートアンプと呼ばれることもあります。ではseparate(分割する)という言葉で呼ばれるということは、一緒になったものがあるのか?というところで登場するのがプリメインアンプです。
この図のようにコントロールアンプとパワーアンプを一つにまとめて、レコードプレーヤーやCDプレーヤーなどから来た信号を一つの筐体の中でスピーカーレベルにまで増幅する機能を持ったもので、英語ではIntegrated Amplifier (統合されたアンプ、の意)と表記されています。国内でもメーカーからインテグレーテッドアンプと呼称されているのを見たことがある方もいるかと思います。形としてはセパレートでは二つのアンプで場所も電源の数も取ってしまっていたところが一つになってすっきりするので、集合住宅など比較的限られたスペースにお住いの方も多い現代ではこれらを使っている方も多いのではないでしょうか。
またここに上げている構成はあくまで一例で、例えば図の中で言うならよくあるCDコンポの本体は音源部からパワーアンプ部分までの3種類が全て合わさって小型化された機器ですし、ラジカセや、スピーカー一体型のレコードプレーヤーなどに至ってはこれらが全てよく見るあの形の中に簡略化されて統合されている形です。また、近年では自宅でDAWやサンプラーを使用した音楽制作環境の中でよく使用されるパワードモニタースピーカーは、パワーアンプ部分がスピーカーに内包された機器であり、インターフェースやプリアンプ・ボリューム付きのD/Aコンバーターなどが音源部とコントロールアンプを内包したものと考える事も出来ます。
このように、普段音楽を楽しんでらっしゃる方々であれば当たり前に使っている機器の中にも増幅器としての機能はあり、それを一つ一つの機器として取り出したものが、皆様がよく『アンプ』と読んでいる機材たちなのです。
中古市場で高価買取のアンプとそうでないアンプ、違いはどこに?
前項ではアンプの役割の面での種類をご紹介させていただきました。しかし、それ以上にオーディオアンプを販売しているブランドは数多く存在し、またその中でも沢山のラインナップが存在しています。いったいそれだけ種類がある理由とは、また高価なものから安価なものまで様々な違いが生まれる理由はどこにあるのでしょうか。
まず一つは、回路構成の違いです。アンプを設計する時に、まず基本となる増幅回路自体ががA級、B級、AB級、C級、D級、GH級などなど複数存在し、細かい内容は今回省略しますがこれらはアルファベットが高級か低級かを表すわけではなく、それぞれの増幅回路の構成方法の違いから名づけられ、それぞれのメリットやデメリット、それをもとに傾向であったり信号によってよく使われる場面なども違います。
次に挙げられるのが構成する部品です。最終的に完成したオーディオ機器も勿論工業製品ですが、それを作るための抵抗やコンデンサー、ICチップや内部配線までそれぞれもまた工業製品です。そのため、そういった細かなパーツの中でも工業製品としての誤差や精度、性能の違いが出てくるため、部品から拘れば拘るほど似たような回路構成で出来ていたとしても性能やコストの差が出てきます。また、全く種類として同じパーツのだけではなく、アンプの世界ではよく議論になる真空管とトランジスタ、トランス電源とスイッチング電源のように大きく見れば同じような役割を持つ回路の中の部品でも何を使うかによって大きくその特性が異なります。
そしてその特性は、特に音楽鑑賞のためのアンプの中ではそれぞれのリスナーの普段のリスニングの心地よさ、音質が好みに合っているかどうかを決める重要な要素になるのです。そうして各社回路や部品を拘り抜いて作るのか、はたまた一定のクオリティまでコストを抑えながら作るのかによって高い物から安い物、大きなものから小さなものまで多種多様なオーディオ用アンプが販売されています。
本来もっと細かな理論が沢山あり、マニアの方であればもっと詳しい内容もご存じかとは思いますが、今回は一旦割愛させていただき、ここからは実際の製品を見ながらご説明させていただこうと思います。
こちらは、弊社に在庫しているMcIntosh MC252という高級パワーアンプ。以前のコラム『中古・買取でも定番品、オーディオブランドMcIntosh (マッキントッシュ)について』でご紹介したMcIntoshの人気パワーアンプです。
※こちら販売はしておらず弊社備品となりますのでご了承ください。
まず皆様お馴染みの油性ペンと比べるとこの大きさ。パワーアンプとしては極端に大きい方ではないため我々のようなオーディオを知る人間では感覚が麻痺しがちですが、それでもオーディオを知らない方からしたら相当に大きいアンプかと思います。
またその総重量は約43kg。最早人間の10代~小柄な成人くらいの重さが逆にこのサイズに詰め込まれています。一体どんな機器なのか、一つ一つ見ていきましょう。
まず前面パネル。中古品の為少々ガラスパネル裏へ入ってしまった塵などの汚れがありますがご容赦ください。まずMcIntosh伝統のブルーアイズと呼ばれる左右の青いメーターがあり。その下に丸いスイッチが二つ並んでいます。左側がメーターの動作のモードとON/OFFのスイッチ、右側が電源のON/OFF/REMOTE切り替えのスイッチ。つまりぱっと見ノブのようにも見えますがこのアンプにはボリューム調整はついておりません。そのため音量調整はここまでに接続するコントロールアンプ等で行い、このアンプ自体はその信号を一定の倍率で増幅して出力するだけのパワーアンプとなっています。
次にその入力と出力の為の端子のある背面を見てみましょう。
両端にスピーカーケーブルを繋ぐためのターミナルが左右対称に並んでおり、その間に左から電源ケーブル接続端子、REMOTE動作用端子、モード切替スイッチ(本機にはスピーカーの接続方法がいくつかありますが、今回は割愛します)、入力用XLR端子、入力用RCA端子の順に並んでいます。この入力端子に関してはXLR端子がバランス接続、RCA端子がアンバランス接続となるわけですが、この2種類の違いに関してもまた別の機会でお話できればと思います。
そして画像の半分程を占めている端子の上のギザギザ。これはこの裏にある増幅回路を冷却するためのヒートシンクになります。
実際の増幅回路がこの金網の中に入っており、この内部のトランジスタから発せられた熱を逃がすために背面は一面丸ごとヒートシンクが搭載されています。こういった放熱機構はPCの内部や車、バイクのエンジン回り等で似たようなものを見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。オーディオ用アンプでは、ヒーターを内包する真空管は勿論熱を発するのですが、トランジスタアンプでもトランジスタが高温となり、適切に放熱をしないと動作や寿命に影響を及ぼします。
ライブハウスや大型のステージ用のパワーアンプではその大出力の動作・発熱に対応するためパワーアンプにファンまで搭載して冷却するものもありますが、ファン自体が騒音を発する上、回路へのノイズを発してしまう可能性もあるため家庭用のオーディオアンプではあまり使われず、各社こういったヒートシンクや筐体自体の凝った作り、筐体内での配置などで趣向を凝らしています。
そしてこのアンプが重量級である理由であり、増幅された信号、もしくは増幅するための電源の重要部品となるのが上からみた中央のこの四角い構成部品。両端二つがMcIntoshのアンプを象徴する1部品である独自のオーディオトランスフォーマー、真ん中が電源用のパワートランスです。
電気回路を知らない人からしたらカタカナばかりでなんのこっちゃ?となるかもしれませんが、簡単に言ってしまえばこの部分がこのMcIntoshブランドのアンプとしての肝、このブランドのキャラクター性における最重要部品といっても良いものとなっています。そしてその正体をすごくざっくり言ってしまえば主に大型のコイルであり、小学校のころに銅線を巻いてコイルにした電磁石での実験をした記憶がある方も多いと思いますが、それのこれだけ大型のものと思えば理解しやすいのではないかと思われます。
さらにはこれだけ大きな銅の塊を搭載する以上、その筐体も必然的に耐久性のあるしっかりとした作りにする必要があり、そこでまた全体の重量は増加してしまいます。確かに、大まかな動作的に見ればもっと軽い機構で、似たような特性を再現することが可能であり、安価で小型なアンプはそうしてコストダウンされていくわけですが、オーディオ・音楽再生の難しく、奥が深く、そして楽しみとなる部分はこうした決まった構成部品を使用することでしか出せない音質がある、人間の耳に届く印象は構成や使用部品で大きく変わってしまうという点です。
さらには以前の記事でもご紹介した通り、McIntoshはオーディオアンプとしての各所の拘りは勿論、その外見のデザインも重要視しているメーカーです。本品は経年による劣化こそありますが、McIntosh伝統の美しいブルーアイズのデザインは勿論、左右対称のデザイン、極厚のガラスパネルなど、そのこだわりが見て取れる高級感のある一品となっています。
不要なオーディオ用アンプの高価買取の為に注意したいことは?
傍から見ればそのほとんどが箱型のシンプルな機械。ですがここまでのご紹介、そしてその中で何度も細かい部分を割愛させていただいたように、各社非常に様々なこだわりを凝縮しているのがオーディオアンプ。
決して小さな買い物では無い故、各社無論耐久性も考えられてはいますが、やはりオーディオ関連機器は繊細なもの。特に中古機器では修理しようとしたところでメーカーのサポート期間が既に切れているものや、そのメーカー自体が無くなっているものも数多く存在します。それは使用するお客様だけではなく、我々中古買取店も故障状況によっては修理が出来ず、高価買取やその先のちゃんとした動作品としての販売が難しくなってしまうこともあります。
そうならないために、どう扱ったらよいのでしょうか。
まず一つ目は、埃や砂などが被るところに置かないこと。服や布などから発生する埃に関しては、生活の中で使用するものであり、インテリアとしての側面も持つオーディオ機器である以上、ある程度は逃れられない部分ではありますが、もし使わなくなってしまったり、故人のもので整理したりというときに、埃や塵を被りやすい環境で保管してしまうのはNGです。
倉庫や物置の中でずっと放置していたけどその前は使えていたから大丈夫なはず、と思われがちですが、そういった保管をされていた際、表面にたまった目に見える汚れや劣化だけではなく、内部にも不純物が多く溜まってしまうケースが多くあります。そうなってしまった機器をいざ再び電源に接続すると、回路の中にゴミが入ってしまっていたり、可動部の中に溜まってしまっていたりして、正常に音が出ないことは勿論、ショートしてしまってヒューズが飛ぶ、最悪の場合は発煙するようなものも、状態の悪い中古買取品などでは決して珍しくありません。オーディオ機器は、悪環境に放置してしまうと『何もしていないのに壊れた』がよく発生してしまうものでもあります。
本来であればオーディオルームでの喫煙なども、機器や回路部品の内部にタールなどが入り込み、表面にも埃や塵が貼り付いて溜まってしまう原因にもなるため、あまり良くは無いのですが実際はやはり嗜好品と音楽はつきもの。ある程度そういった原因の劣化は目を瞑るとしても、劣悪な環境での保管はせずに、早めに買取業者への売却や、譲渡などでオーディオアンプ本来の性能のまま次のオーナーへと手渡す方が良いでしょう。
また、先程もご紹介したような、非常に重いパーツで構成されている機器は、持ち運びが困難なのは勿論ですが、一旦どけるからと横にしたり本来置くべきではない方法で設置したりすると故障してしまう可能性があります。回路設計というのは繋ぐ順番や構成だけではなく、基板への実装方法や、その搭載された際の重力の向きなども考慮されて行われるため、そうではない置き方は本来想定されていない場合も多く、整理や運搬の際に無理な設置をすることで重い部品の取り付けが歪み、壊れてしまうことも考えられます。
そういった面でも不要になり、スペースを圧迫してしまう場合であれば早めに買取業者に相談した方が良いともいえるでしょう。
また、遺品など、自分の物では無いオーディオを整理する場合に多いのがアンプの端子の破損です。アンプは使用されていた状態であれば最低限入力と出力の2種類、それ以上にプリメインアンプやコントロールアンプでは多数他の機器類と接続されている場合も多いと思われます。
そんな中、一先ず機器を取り出そうと繋がったまま無理矢理アンプ類を引き出してしまって端子の破損は勿論、誤ってノブ等他の部分をぶつけてしまったり、端子からの外し方が分からず無理矢理ケーブルを引っ張ってアンプ側の端子を破損させてしまったりといった商品の入荷も、残念ながらゼロではありません。そうなってしまっては、修理が必要、もしくはもうパーツの替えが世の中に無くオーディオとして使用不可能となって本来通常使用できて高値で買取させていただけた筈のものも、お値段を付けづらくなるどころか、回収だけしてもやむなくジャンク出品や廃棄処分となってしまう場合もあります。
その為、やはり扱いにある程度の知識と経験の必要とするアンプ類は、扱いを知らないお客様の場合は接続もされたままで買取業者にお問い合わせいただくのが良いでしょう。専門の買取業者であれば、査定後のセットの解体は勿論、接続された状態のその場で試しに音を出させていただくなど、より詳細な状態で見積りが可能となる場合もあります。
いかがでしたでしょうか。長くなってしまいましたが、ここまで読んでいただいたオーディオに普段触れることの無い方にも、何となくオーディオアンプについてご理解いただけたのではないでしょうか。
アンプはオーディオセットにとっての心臓、数々の名機とこれからも世に生まれる拘りの品々と共に、我々エコストアレコードもさらなる買取強化を行っていければと思います。
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